ばんえい競馬 朝の風景

ばんえい競馬とは、体重約1t、高さ2mほどの大きい馬が、数百キロのそりをひき、坂の障害を越え、ひたすらまっすぐ進むレースです。一般的な競馬のように猛スピードではありません。馬と一緒に観客も歩き、横から応援ができます。
2012年のある日、私は初めてばんえい競馬の映像を目の当たりにしました。サラブレッドのような、しなやかな美しさではなく、馬が人間と土と一体となったような荒々しさを感じたのを覚えています。
一度直接見て見たい…こうなると居ても立っても居られず、自分が漠然と抱いて来た「馬」と「自然」に近づけるのではないかという淡い期待を抱きながら、私は帯広へ向かっていました。
2013年の1月のことです。雪国育ちでない私は空港の扉から出た瞬間、凄まじい冷気におののき、また空港へ戻りました。見た感じでは晴れているのに、マイナス2、3度だと聞きました。えらい場所に来たと痛感しました。しかしそんなのはまだまだ序の口です。
私はあるツテをたどり、帯広競馬場の厩舎へ入ることが出来ました(※部外者が厩舎の中に入るには、オフィシャルな許可が必要です)。

朝の5時。北海道は夜明け前が一番冷え込みます。マイナス25度。水気を帯びたもの全てが凍りつきます。もちろん、未体験の寒さです。口をマフラーで隠しますが、自分の吐いた息が、かかり、まつ毛と眉毛が凍りつき、視界を遮ります。大地も凍てつき、歩くとザクザクと、細かい氷を踏みしめる音がします。

そんな状況が当たり前と言わんばかりに、厩舎村の中の運動場では、馬が黙々とソリを引きトレーニングしています。キーッとソリと氷が擦れる独特の音が響きます。

はじめのうちは暗いのですが、徐々に空が白み、やがて日が昇ります。

馬たちの息が大きな煙になり、辺りに立ちこめます。そして馬に朝日が差し込み、この世の物とは思えないほどの神秘的な風景が目の前に広がり、私は魅了されました。

そしてとある厩舎にて、「馬博士」と慕われている戸田富治さんと運命的な出会いを果たします。

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